ラブクラフト全集3で読んだので
■ストーリー■
アメリカ、テンペスト山。雷雨が起きやすい特徴的な土地で、移民さえ居住を諦めたほどの土地。
そこになんとか移住した閉鎖的な気質の一族の屋敷は、部落民の間では恐怖の象徴であった。
数々の恐ろしくおぞましい伝説と噂話の残る土地で、大虐殺事件が起こった。
部落民75名が消え去り、50名ほどは惨殺死体で見つかるという事件だ。部落民は伝説の悪鬼に恐怖し、アメリカ中から記者が押しかけた。
主人公はそんな中、伝説上の怪物の正体を暴くべく活動を開始する。
■感想■
ラヴクラフトにしては長め、の作品。4部構成ですが、やはり抜群なのはその最終章でしょう。
怪奇小説を読むのは久しぶりで、ネットで読む「洒落怖」などではなかなか味わえぬ怪奇譚を堪能できました。
化物の身体的特徴を上手く利用した、読むものをうならせる小説だと思います。
毎度毎度、ラヴクラフトの著作を読むと前半中盤では文章が頭に入ってこないことがよくあるのですが、流石終盤や見せ場に入るとこちらを引き入れる魔力がありますね。
読むのが早いなら数十分で読み終えてしまう程度の文章量でありながら、より深い底を感じさせます。
4部ごとに段々と真相に迫っていきながら、それに伴って心身を酷く衰弱させていく主人公はラヴクラフト小説の定番。
「チャールズ・ウォードの奇妙な事件」も、『やられた!』『なるほど!』と思わず唸ってしまう小説で大好きですが、あちらが小説の書き方、どこでどの場面を出すかという技術でそうさせているのに対し、こちらは純粋な伏線回収での驚きですね。
いや、奇妙な事件の方も、伏線回収といえばそうですけどね。
読むときにはなるべく純粋な気持ちで読むと、更に驚きが増すでしょう。
[1回]
■ネタバレ感想■
世間知らずのオランダ移民がちょっと子孫増やしすぎて地下潜ったら化物になっちゃったゾ☆
まとめるとそんな感じ。
読む前の先入観「ラヴクラフト=邪神」という構図があったので、最終的に化物の正体が人間だということに驚き、そう考えると伏線と伏線もどきが散りばめられていたなと感じます。
短い中でよく伏線を効果的に配置したなあと感嘆。
一族特有の眼の異様さ、という伏線が目立ちすぎず地味すぎず、伏線としては最高の状態で読者の心に残るようになっております。
私の読み逃しかもしれませんが、結局主人公が化物に襲われなかった理由はなんなのでしょうか? それがちょっと不明。襲われた部屋が関係しているのでしょうかね?
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